がんとの闘いⅢ

 

時間との闘い

放射線治療であるサイバーナイフ及び肺がんにおける気管支鏡検査が可能な病院探しが始まりました。

加えて、精密検査により他部位への転移が認められた場合に対処できる規模の病院でなければなりませんでした。国もしくは、県単位でがんにおける指定病院なら更に言うことはありません。

しかし、現在の日本国の医療費は、高齢化とともに嵩み続け、政府及び厚労省は病院の縮小を図り、加えて地方の病院は医師不足で悲鳴を上げています。

そのような環境下で、重度の糖尿病と原発性肺癌、転移性脳腫瘍を発病しており、全身転移の可能性が大の患者を受け入れてくれる病院を探さなくてはなりません。

この病院の選択で全てが決まると言っても過言ではないのです。そして、父には“時間”がありませんでした・・・癌(がん)細胞の転移が何処まで進んでいるのか・・・検査期間中にも転移が繰り返されているのではないかという“時間”への恐怖です。

そして、九州県下では、一か所だけ全ての条件に当てはまる施設を有した病院を見つけ直ぐに連絡を取りますが、情報提供書を求められます。つまり、父の身体状況を見た上で決めるというものです。

検査入院している病院の担当医師も親身に対応して下さり、糖尿病の既往歴はあるが、コンディション及び体力は良好であることを詳細に情報提供書に記して下さいました。

実際、検査期間中もスロートレーニングは欠かさず、リハビリも全てに参加し、車椅子の使用も一切行わず体力を維持し続けていたのです。

重要なのは、健全な精神状態(脳機能)を維持するためには、体力のエネルギーを自ら感じることです。動ける身体が強い“行動力”を生み出します。

癌(がん)の専門病院に転院が決まり、改めて総合的な検査が始まりました。

父の体力とコンディションを確認した脳神経外科部長が、すぐさま脳腫瘍の治療準備に取り掛かり、私達家族に説明を行います。

私達が望んでいた放射線治療であるサイバーナイフにおける説明です。薬物使用を避けてきた私達家族にステロイドを使用する可能性があることを伝え、副作用や最悪の事態も丁寧に説明して下さいました。

これは、糖尿病患者の多数が薬や体力低下による病状を抱えているため、ステロイドを使用するからです。

 

 

2016年3月、3日間に渡ってサイバーナイフを使用した放射線治療が行われます。

その効果は父にとっては絶大で、放射線による治療痕は残っているものの、脳腫瘍は完全に消滅したのです。

ステロイドも使用していません。コンディションは最高の状態でした。

 

 

 

原発巣の肺がんと向き合う

脳腫瘍に対するサイバーナイフ(放射線)治療を終えた後、全身への転移検査が始まりました。

その間にも肺がんが大きくなっていないか、あわせて検査が進みます。

造影剤を使用したMRIや胸部X線検査、PET検査等、膨大な時間が費やされていきます。

「PET検査」とは「陽電子放射断層撮影」という意味で、ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(Positron Emission Tomography)の略。
がん細胞は、正常細胞に比べて3~8倍のブドウ糖を取り込む性質のため、ブドウ糖に近い成分(FDG)を体内に注射して、全身をPETで撮影する。

私は、全ての検査結果を持ち帰り、何度も見直しました。他の部位への転移を徹底してチェックします。

 

 

幸い脳以外の臓器には、転移が認められませんでした。これは、運動療法と食事療法の効果が現れている証でもありました。

そして、原発巣でもある肺がんへの更なる検査の説明が始まります。それは、気管支鏡検査の説明でした。

気管支鏡検査とは、肺または気管支など呼吸器の病気を正確に診断するために、口または鼻からのどを通して気管支鏡(気管支ファイバースコープ)を気管や気管支の中に挿入して観察、組織や細胞、分泌物などの検体を採取する検査。

私達家族に、検査にあたっての同意書を求められますが、少しの間時間を頂き、知り合いの医師や関係者から副作用について調査をしました。

高齢者であり糖尿病の父に耐えられるだけの免疫力や速やかに回復する体力が残っているのかが大きな疑問と不安になっていたからです。

気管支鏡検査の副作用として、 肺・気管支からの出血(発生率0.66%)、発熱や肺炎(発生率0.22%)、 気胸(発生率0.4%)、そして一番恐れていた麻酔薬によるアレルギーや中毒(発生率0.04%)です。

父は、喫煙歴も長く、肺気胸も進行していました。このような状況下で、私はリドカインという局所麻酔薬に対するアレルギー反応を一番に懸念したのです。

その他にも呼吸不全(発症率0.09%)、心筋梗塞及び血管系の障害(発生率0.07%)、気管支閉塞(発生率0.02%)、死亡例(発症率0.004%)であり、全ては0%ではないのです。

糖尿病の合併症を複数発症しており、脳血管にはバイパスが必要なほどダメージを受けている現状を冷静に分析していきます。

この当時、協力して下さった関係者の皆さんには、心より感謝しています。私の最高の人脈です。

しかし、誰一人として“答え”を出してくれる方はおらず、全ては本人及び家族が判断していくしかない過酷な環境です・・・。

私が下した苦渋の決断は、検査を行わないという結論でした。勿論、父と母の同意があってのことです。家族が一丸とならなければ、何の意味も持たないのです。

そして私にはもう一つの確信がありました。肺がんの進行が止まっていたことが確認できていたのです。

非科学的な話になりますが、私は五感を仕様して命懸けの仕事をしてきました。アクション俳優という職業です。現場はとても過酷で、私達にあわせるのでなく撮影現場にあわせていく過酷な環境です。その日の体調や風や天候、足場を含めた現場の確認を含めて、20メートルを超えるダイビングでは、恐怖や不安が襲うこともあり、バイタルは悲鳴をあげます。

私達は、脳機能をコントロールし、バイタルさえもコントロールしなければ死と向き合うことになります。ここで唯一の頼りが五感です。父のトレーニング時には、必ず背後から身体を密着して、脈拍に合わせて肺の振動と呼吸音の状態を確認していきます。

父の様子及び病状への問いかけにも毎回「どうもない(何もない)」と言う返答です。あくまでも私の判断ですが、自覚症状のない癌(がん)は放置し、体力の向上と免疫の向上を図った方が良いと考えたのです。これが私が頼りにしている五感の判断でした。

父のトレーニング時には、必ず背後から身体を密着して、脈拍に合わせて肺の振動と呼吸音の状態を確認していきます。

父の様子及び病状への問いかけにも毎回「どうもない(何もない)」と言う返答です。あくまでも私の判断ですが、自覚症状のない癌(がん)は放置し、体力の向上と免疫の向上を図った方が良いと考えたのです。

勿論、癌(がん)を甘く見ているわけでも、医師の診断や提案を軽んじているのではありません。癌(がん)は、とても恐ろしい病気です。

私は医師でもありませんし、エビデンス(科学的根拠)を証明している訳でもありません。ただひたすらに父を助けたい思いから浅学非才な脳みそをフル回転させ、調査し、自己の身体を使用してバイタルを確認し、父の癌(がん)と闘っているに過ぎません。

そして、父を伴い、自宅へと帰り、徹底した運動療法と食事療法で闘っているのです。私の運動理論は、衰えとは人体の機能を支える筋力が低下した時にミトコンドリアを含めた様々な細胞が低迷するのではないかと考えています。

父は、Ⅱ型糖尿病こそ発症しましたが、70歳まで癌(がん)等は発症していません。明らかに筋力低下から起こる体力、免疫力の低下が影響していることは否めません。

その元凶は、生活習慣、つまり日常の生活時間にあります。徹底して、生活習慣の改善を行います。

誇張するならば、肉体も脳機能も健全なアスリート同様の生活を過ごせれば、健全な肉体が手に入ると信じています。

幸い私の職業はとても過酷なものでした。トレーニングに対する精神的苦痛は誰よりも知っているつもりです。その乗り越え方を父にコーチングすることによって、生活習慣を変えて行くことだけに集中しました。

食生活から入浴、座り方、休み方、運動のあり方まで、改めてチェックすると納得するほど病気との密接が理解できます。

本人にとっては、人格を否定されるほどの嫌悪感かもしれませんが、運動のプロとして向き合うようにしました。

全てが効率の悪い生活を送っていたからです。トレーニングのあり方も、理解するまでに相当な時間を有します。

これは全てにおいてですが、継続が途切れた瞬間に奇跡の法則は崩壊します。全て自ら放棄した瞬間です。

これは、私達の家族の闘いです。父が途中で挫折すれば、或いは私と母が挫折すれば病魔に食い尽くされる闘いです。

医師からの「危険だよ」と言う助言から既に1年の月日が過ぎようとしています。医師のこの言葉には、多くの意味が含まれています。

そもそも闘えるメンタル(精神面)を持っていれば、このような病気には冒されないという意味であり、外科療法や化学療法に頼る時間が遅れれば最悪の事態になると言う意味も含まれているのです。

しかし今現在は、Ⅱ型糖尿病と合併症の後遺症である右片麻痺、失語障害、原発性肺がんを抱えている父は、毎日私が作成した運動メニューをこなし、4㌔のダンベルを振り回しています。このメンタル(精神面)を私流に解釈すれば、弱体化した脳機能の強化に成功すれば勝利出来ると信じ、大きな課題でもあるのです。

私は現在、空手を含めてアクション及びワークアウトを指導する立場ですが、アメリカで学んだことは大きな財産となりました。免疫療法における学会にも参加させて頂き、真のエクササイズ確立に目覚めたのも今回の父の病との出会いであったことは否めません。

現在は、講演会を中心に活動していますが、生活環境を考慮し食生活の改善を図ることを意識するブレインプログラム(脳機能プログラム)を推奨しています。

アメリカ人を始めとする諸外国の文化の異なる人間と日本人の体格や環境は異なり、全てを取り入れることは出来ないからです。

しかし、根本的な改善は同様で、先進国である日本も過多に摂取してきた糖質による影響は否定出来ないのです。

医学界では、糖尿病自体が、がんリスクの上昇に関わっていることについて三つの病態を指摘しています。

一つ目には、高インスリン血症。

二つ目に高血糖、脂肪組織の慢性炎症。

三つ目は、がん細胞は、ブドウ糖を分解して必要なエネルギーを作り出す「解糖系」という代謝経路を主に利用するということ。

これは、PET検査の仕組みを理解すれば一目瞭然です。即ち、糖尿病患者は、癌(がん)に冒されやすいということです。

また後述しますが、筋肉量についても大きな関係があることは否めません。線が細くスタイルのいい女性が癌(がん)に冒されるニュースを目にする機会が多くなりました。

全てに当てはまることは、日本人にあった食生活の改善であり、環境に適した運動です。即ち生活習慣を抜本的に改革することです。

どの文献を見ても、患者数から見ても明らかに糖質を多く摂りすぎての病(死因順位)であり、タンパク質の不足は否めません。

糖質制限において賛否両論、議論がかわされている昨今ですが、近年ではウエスト症候群(点頭てんかん)とミオクロニー失立発作てんかんに糖質制限より遥かに厳しいケトン食で、発作型に有効であるという検証文献が出されています。

日本小児神経学会は、ケトン食を難治性てんかんの子供に治療食として用いています。

では、てんかんの子供は糖尿病かという話になりますが、我が国は、高度成長とともに長きに渡り、糖質過多の食生活文化を築き、遺伝子に変異が及んでいることも否めないのです。我々の体質は環境によって左右されていきます。

今口にしているものが子孫へと影響することは、エビデンス(科学的根拠)が証明しています。

しかし言い換えれば、俗に言う癌(がん)体質、糖尿病体質と呼ばれる遺伝子も環境を変えれば治癒できるという結果だと思っています。

癌(がん)告知から1年の歳月が過ぎましたが、糖尿病の対策も行わなくてはなりません。

薬を一切使用せず、食事療法と運動療法の結果は、すこぶる良好でした。医師からお褒めの言葉を頂くほどです。

 

改善すべき点は、カリウムとγ-GDPの値です。カリウム対策は、調理での対策となり、γ-GDPに対しては、父はアルコールを一切呑みません。

考えられるのは、長年放置した脂肪肝、薬の影響です。対策としては、更なる生活運動量を増やすプログラムを行っていきます。

そして、新たな食事療法プログラムです。エネルギー代謝をカロリーで割り出し、エネルギー代謝を落とさずに脂肪を除去する療法です。

この療法は、100グラム単位で計算し、検査結果を基に数値を変動させて行く療法です。唯一の欠点は、計算を間違えば体脂肪が増大し、Ⅱ型糖尿病への血管、冠動脈石灰化した心臓、脂肪肝に冒された肝臓に大きな負担がかかり、動脈硬化が一気に進むことです。

癌(がん)が暴れだす瞬間でもあります。

癌(がん)は、とても怖い病気であり、人間社会の脅威です。

私達家族の闘いはまだまだ始まったばかりで、メンタル(精神面)をどのように強化し、プログラムを継続するかが勝利の鍵となっているのです。

次号『運動療法の理念』へ続く

高木淳也の『運動と食事療法は本当に有効か!?脳機能を刺激して生活習慣に挑むTAKAKI METHODの挑戦(仮)』が、電子書籍化することが決定しました。

詳細が分かり次第、当サイトでご報告致します。

高 木 淳 也

4歳で空手を始め、14歳で極真空手福岡県支部分支部指導員として活躍。

16歳でJAC(ジャパンアクションクラブ)入団。入団直後に空手部門コーチに就任。

17歳でアクションTVドラマ『カンフーチェン』で、アクション俳優として主演デビュー。

以後、真田広之らと映画、テレビで活躍し、2013年、アメリカ合衆国ハワイ州ホノルル市郡政府より、賓客招待され渡米。

アクション俳優及びMartial Arts(武術)のスペシャリストとして政府機関、司法、一般へ向けてのデモンストレーション開催。

同年10月、アメリカ合衆国ハワイ州ホノルル市郡功績賞受賞。

2014年、アメリカ合衆国ハワイ州商務省MMA(総合格闘技)諮問委員就任。

同年、アメリカ合衆国ハワイ州ホノルル市郡政府特別顧問に就任。

2015年、UFCハワイジムで、日本人で初めてMartial Arts(武術)コーチを行う。

コーチ歴は、2017年で38年目を迎えた。

  • ハワイ州ホノルル市郡政府 Martial Arts(武術)スペシャリスト賓客招待者
  • American Red Cross(米国赤十字社)Fast Aid(救急救命上級技能認定者)
  • (公財)日本体育協会公認スポーツ指導者 空手教士七段
  • (公財)日本障がい者スポーツ協会 初級障がい者スポーツ指導員
  • (一社)日本免疫治療学研究会正会員
  • 日本スポーツ精神医学会正会員